Dancer Interview きたまり
[話し手]
きたまり
ダンサー・振付家
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[聞き手]
横堀ふみ
NPO法人DANCE BOX
プログラム・ディレクター
>きたまりさんにとって美香さんの出会いはいつでしたか?
きたまり:フェスティバルゲート時代のダンスボックスで始めて黒沢美香さんの公演(※1)を招聘した時かな。「すごいダンサー来るよ」って言われて、その時はボランティアスタッフでダンスボックスには関わっていたから、じゃぁその日手伝おうと見たのが初めです。
ワークショップも同じ年にあったのかなぁ。ワークショップも薦められるままに受けていたと思います。 私が19歳か20歳ぐらいのときかなぁ。
>そのときの印象はどうでしたか?
ワークショップは毎年受けていたので、どの年のワークショップがどうだとか、あまり記憶にはないのですが、美香さんの作品を見て(上記※1の公演)、“お母さん”みたいな身体の人が踊ってもいいんだと。作品の途中で裸になるシーンがあって、その身体がちゃんとした中年の身体だったから。
それまで見て来た、殆ど裸みたいな状態で踊っているダンサーもみんな、細くて年をとっていても若々しい人ばかりを見てきたから、普通に歳をとっていいんだ、普通に歳をとっていく人の作品もいいなぁと。
>そこから黒沢美香&大阪ダンサーズ「ジャズズ・ダンス」(2007年)に最年少で出演しましたね。
大学卒業してからだから23歳ぐらいかな。
>今回の神戸ダンサーズのとの違いは?
メンバーが違うし、上の世代と下の世代のダンサーに挟まれてます。最近どの現場でもそんなポジションにいます(笑)。
>黒沢さんならので舞台、ほかの舞台との違いはなんですか?
許容範囲が広い。振付家からの「こういうことをしてほしい」という要望に対しての振り幅が大きいことかな。ほかの舞台の場合は、言われたことに対して、それになろうとするんですね。美香さんの場合は、それになろうというよりか、もう少し自分に還ってきて考えられる。なにかなろうと思ったら演技とか入っていて自分じゃないものになるんだけど、美香さんの場合は当事者として何かを出せるという感じはするかな。
>美香さんのワークショップを受けたり、公演に出演する中で、きたまりさんの活動にどのような影響がありますか?
ダンスの捉え方が広くなったと思います。この振りができなきゃいけないけど、出来なくても説得力をもたせたらいいよ、のような許容範囲の広さもあると思います。振りというものが、出来た方がいいのだけど、出来なくてもダンスになる、ということはどういうことか、運動からダンスになっていくのはどういうことか、ダンスへの入り口が広くなった感じです。
「Dance Fanfare Kyoto」(※2)で美香さんの『lonely woman』を上演しましたね。
>「Dance Fanfare Kyoto」で行う前に「lonely woman」を見る機会があったり、また私自身も出演したこともあって、面白いなと思って、、何が面白いかと言うと、ダンサーじゃない人がその場に立つことや、とてもシンプルに「身体への問い」。その場で30分間いるということは、どういうことなのか、踊ればいいのか、踊らなくても成立するということは何なのかということをスタートとしてそういう問いから始めたかった。
>実際はどうでしたか?
凄い面白かった!今でも思い出し笑いするもん!もはや『lonely woman』じゃなかった、『lonely woman』をどんどん破る人がいても、そこで、美香さんが「ダメだったね」と言わずに、「あの身体は何なんだろう」と問いを投げかけてくれる、続きが考えられるなと思う。
>美香さん語録で印象に残っているのはありますか?
あんまり覚えていないんだよね!でも、どの言葉もいつも面白いなぁと聞いています。一番面白いのは声のトーンだと思う。ダメだししている時は声があがって、ほめる時は若干下がるというところ。ダメ出しのほうが早いスピードで投げてくる、よかったという時はふわぁと投げているようなトーンの変化が一番に身体にくる。
>次の「Dance Fanfare Kyoto」について
5月の最終週に行います。自分で作品をつくっている人や、若い制作者たちと一緒に準備しています。自分で実験したいことを他人とシェアしていこうという形で企画をしています。企画する運営メンバーはいま5名です。ダンサーや振付家は運営メンバーになかなか入っていないこない、難しいですね。ただ、しょうがないですよね。多分、自分が出発点で、自分がやりたいということになってしまうだんろうな。
>現在のコンテンポラリーダンス・シーンに対してなにか思うことはありますか?
あるけど「Dance Fanfare Kyoto」を通して発散していると思う。Fandareをする前は「ダンスシーンも含めてつまんないなぁ」と思ったりしていたけど、今は若い世代の人たちを見ているといいなぁと思う。あと2、3年でこの子たちが出てくるんだろうなぁということも思うし。「アーティストって何をするべき人間か」ということをもう一度ちゃんと考えないといけないのではと思うこともあるけど、考えている人はちゃんと考えているし、個人差だしね。嫌なことはやりたくないしね。20代はなんでもやったらいいと思うけど、嫌なことをやらないということを決めるタイミングも大事やと思う。
今回の黒沢美香&神戸ダンサーズのメンバーはいいですよ。過去と未来をみるような感じです。こんな風になれるのかなとか、私は果たしてこんなんだったのかなとか。狭間にいますね。
※1
2004年 黒沢美香ソロ・ダンス『ダイアモンド・ナイト』会場:Art Theater dB(新世界)
「クロソフスキー/アクタイオーンの水浴を覗くディアーナ」(2000)/「ロマンチックナイト」(1992)/船を眺める...より「椅子のアリア」(1987)/「ラルゴ」(1996) を一挙上演
※2
「Dance Fanfare Kyoto」
Dance Fanfare Kyoto は、作品のクリエイションを通して、身体の可能性を探る実験の場です。
2012年2月に開催された「We dance 京都 2012」を足がかりに、アーティストと若手制作者が企画を立ち上げ、2013年7月にvol.01を、2014年6月にvol.02を実施。
総勢50組以上のアーティストがジャンル・バックグラウンド・世代の境界を越えて参加している。
きたまりは代表として「We dance 京都 2012」創設当初から「Dance Fanfare Kyoto」を牽引している。
※3
『ロンリーウーマン』について
ルール:ダンサーは立ったその場所を動いてはならない。
地図:横に並んだトリオでダンスする・・・・・・空間位共同態 交代する縦のデュエットでダンスする・・・時間位共同態手続き:① ダンサー3人は、前を向いて横一列に並んで立つ。② ダンサー各自は、それぞれ<開始時>に正面向き直立の瞬間を経過する。③ 開始後30分間は【ルール】と【地図】の範囲内でなんでもできる。④ 30分経過時点では、次の3人と交代が成立しているべきである。
(「Dance Fanfare Kyoto」のWEBサイトより)
(文章:横堀ふみ)