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[コラム]「黒沢美香&神戸ダンサーズ@ArtTheater dB Kobeに向けて」

2007年の黒沢美香&大阪ダンサーズを企画実施した、当団体のエグゼクティブ・ディレクターの大谷燠が大阪公演を振り返り、本公演の期待を語ったコラムです。

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2007年大阪で公演した黒沢美香&大阪ダンサーズ「ジャズズ・ダンス」から8年。当時出演したダンサーが今回4人出演するが、他の9人は初参加である。

この新しい参加ダンサーが加わることや時間の経過のなかでどのような作品に仕上がるのか楽しみである。

前回の公演を思い返してみる。

黒沢さんの作品はいつも観終わった直後よりも、その後、ボディブローのようにじわじわと効いてくる。直後の感覚は禁断の秘密の園に間違って紛れ込んでしまったような、できれば逃げ出したいような気持ちになったのを覚えている。普段どちらかというとノーメイクか薄化粧のダンサー達がルージュの紅を引き、黒い衣装にハイヒールという出で立ちに圧倒されたのかもしれない。サンスクリットの学者でもある松山俊太郎が「男は昆虫、女は航空母艦」といっていたのを思いだす。

物語の初め、ダンサーはそれぞれ自分の身体と対話するように腰をくねらしたり、佇んでいたり。まわりのダンサーの身体や空気と戯れながら探求と放射を繰り返し、緩やかに高揚していく。

やがてひとつのパターンに順々にランダムに入っていく。1人が2人、2人が3人のユニゾンになっていくが、それも振りとしての振付ではない。

どうもここだという感覚を見つけることが要求されているように思う。

一方、ひとり金のスパンコールの衣装を着たダンサーが孤独に眠っていたりする。白雪姫のように。

3人の不自由と思われるダンサーが舞台を横切って、奥の壇上に鎮座する。彼女たちは供え物のも見えるし、司祭のように見えたりもする。覆面をしてただただ立っている。福助のような縁起物にも見立てることができる。

やがて群は「ヘイ」「カモン」など祭りのなかで発せられるような脈略が不明な英語を発しながら、共同しはじめる。

黒沢さんの懐で爆裂する準備を整えているように感じる。

一定のリズムが延々と少しの変化を伴いながら進行していくが、一瞬ストップする。そこから全員のユニゾン。宝塚のラインダンスのよう。祝祭的なシーン。振りは武道を思わせる。

JAZZが流れだし姫のけだるくも激しい凛としたソロ。続いてシング・シング・シングの音楽に不自由なダンサーたちが覆面をとって銘々に踊りだす。場を再び掃き清めるように。

一人のダンサーの打つ鞭を合図にマンボが流れ、キャバレーと楽屋、或いは真夜中の水族館のような不思議なめくるめく世界が展開していく。

やがてゴーゴーの曲になり、真情あふるる軽薄さをともなった乱痴気パーティ。

みんな威風堂々「オンナマエ」かっこいい。

最期は温泉にしばらく浸かっていた快感と少々湯あたりしたような奇妙な感覚が残った。

黒沢さんの作品は様々に読みとることができる楽しみがある。

さて、今回の神戸公演も大いに期待している。

大谷 燠

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